YouTube には毎月何十億人ものユーザーがログインしており、1 日の動画視聴時間は数十億時間、再生回数は数十億回にのぼります。企業は YouTube 広告を使用して YouTube ユーザーとつながることができます。YouTube 広告は、YouTube のウェブサイトやアプリに表示される宣伝動画で、さまざまな動画広告フォーマットがあり、目的に応じて利用できます。
動画広告を効果的なものにするには、ABCD を意識します。
しかし、YouTube 広告には、オブジェクト、BGM、ロゴなどのさまざまなコンポーネントが含まれ、その数は広告ごとに異なります。また、各コンポーネントは動画広告の視聴完了率(以降、VTR と表記)に影響します。したがって、動画広告をコンポーネントというレンズを通して分析することで、企業は広告を構成するどの要素が VTR を向上させるのかを理解できます。こうした分析から得られたインサイトは、新しいクリエイティブを作成する際や、既存のクリエイティブを最適化して VTR を改善することに役立ちます。
企業の動画広告のパフォーマンスを最適化するため、YouTube 広告の分析と、VTR に影響を与えるコンポーネントの評価に機械学習ベースのアプローチを採用することを提案します。以下のことを行う方法をご紹介します。
提案した分析方法は次の 5 つのステップに分かれます。
ウェブブラウザ用の 2 つの YouTube 動画広告があるとします。動画はそれぞれ、ある製品の異なる機能を強調しています。広告 A には「ウイルス対策を搭載」というテキストがあり、広告 B には「パスワードを自動で保存」というテキストがあります。
各動画広告から未加工のテキストを抽出し、以下のような表形式のデータセットを作成できます。簡潔にするため、この例ではテキストの特徴量のみを扱うこととし、タイムスタンプの要素は考慮しません。
各広告の未加工のコンポーネントを抽出した後、大文字と小文字の区別をなくしたり、句読点を除去したりする前処理が必要となる場合があります。
「製品の機能に言及したテキストを入れると VTR に影響するか」というビジネス上の問いに答えることが目標である場合を考えてみましょう。
サンプル内のすべての動画に出てくるテキストを調べ、製品の機能に言及したテキストのトークンまたはフレーズのリストを作成することで、この特徴量を手動で設計できます。しかし、このアプローチでは時間がかかり、スケーリングにも限界があります。
上述のような手動による特徴量エンジニアリングの代わりに、各動画広告のクリエイティブで検出されたテキストを、特徴量エンジニアリングを自動で実行するプロンプトとともに、LLM に渡すことができます。
たとえば、動画広告で製品の機能を強調する価値を探ることが目標であれば、LLM に「『ウイルス対策を搭載』というテキストは機能のコールアウトであるか」と尋ね、次に「『パスワードを自動で保存』というテキストは機能のコールアウトであるか」と尋ねます。
答えが抽出され、0 か 1 に変換されて、後に機械学習モデルに渡されます。
特徴量エンジニアリングの結果は、最初に設定したビジネス上の問いに対する情報を含んだデータフレームとなります。これは、サンプル内の各動画広告の VTR の情報を含んだデータフレームに統合できます。
*値はランダムであり、なんらかの解釈が成り立つものではありません。
モデリングは、固定効果、ブートストラップ、ElasticNet により行われます。詳細については、Manisha Arora と Nithya Mahadevan による投稿、ディスカバリー広告のパフォーマンス分析の紹介をご覧ください。
モデルの出力結果は、重要な特徴量、係数値、標準偏差を抽出するために使用できます。
係数値(+/- X%)VTR の上昇率を表します。正の値は VTR への正の影響を表し、負の値は VTR への負の影響を表します。
有意値(True / False)その特徴量が VTR に統計的に有意な影響を与えるかどうかを表します。
*値はランダムであり、なんらかの解釈が成り立つものではありません。
この端的な例では、「機能に関するコールアウトがある」という特徴量は統計的に有意で、プラスの影響を VTR に与えています。これは、「製品の機能に言及したテキストを広告に入れると、VTR が 2.22% 上昇する」と解釈できます。
上述のアプローチには次のような課題があります。
Ads Creative Studio は、テキスト、画像、動画クリップ、音声をすばやく組み合わせて複数のバージョンの動画を作成できる優れた企業向けツールです。モデルの出力に合わせて、特徴量を追加 / 削除することで、新しい動画を迅速に作成できます。
分析から得られたインサイトに基づいて、コンポーネントを変えながら新しいクリエイティブを作成し、A/B テストを実行します。たとえば、ロゴのサイズを変更して動画テストでテストを作成します。
YouTube 広告のどのコンポーネントが VTR に影響を与えるかを特定することは、広告に含まれるコンポーネントが多いため簡単ではありませんが、広告主にはクリエイティブを最適化して VTR を改善できるというメリットがあります。Google Cloud のテクノロジー、生成 AI モデル、ML を活用することで、スケーラブルで実用的な方法で、クリエイティブに関連するビジネス上の重要な問いに答えを出すことができます。得られたインサイトは、YouTube 広告を最適化し、ビジネスの成果を達成するために利用できます。
この投稿にご協力いただいた Google 社員、Luyang Yu、Vijai Kasthuri Rangan、Ahmad Emad、Chuyi Wang、Kun Chang、Mike Anderson、Yan Sun、Nithya Mahadevan、Tommy Mulc、David Letts、Tony Coconate、Akash Roy Choudhury、Alex Pronin、Toby Yang、Felix Abreu、Anthony Lui に感謝します。