YouTube 広告クリエイティブの分析

1月 16, 2024
Satish Shreenivasa gTech Data Science Team
Huikun Zhang gTech Data Science Team
Manisha Arora gTech Data Science Team
Paul Cubre gTech Data Science Team

はじめに

なぜ YouTube 広告を分析するのか

YouTube には毎月何十億人ものユーザーがログインしており、1 日の動画視聴時間は数十億時間、再生回数は数十億回にのぼります。企業は YouTube 広告を使用して YouTube ユーザーとつながることができます。YouTube 広告は、YouTube のウェブサイトやアプリに表示される宣伝動画で、さまざまな動画広告フォーマットがあり、目的に応じて利用できます。

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課題

動画広告を効果的なものにするには、ABCD を意識します。

  • Attention(注目): 視聴者の関心を引き、最後まで維持する。
  • Branding(ブランディング): 視聴者がブランドを認知し、イメージできるようにする。
  • Connection(つながり): 視聴者とブランドの感情的な接点を作る。
  • Direction(行動喚起): 行動を起こすことを視聴者に促す。

しかし、YouTube 広告には、オブジェクト、BGM、ロゴなどのさまざまなコンポーネントが含まれ、その数は広告ごとに異なります。また、各コンポーネントは動画広告の視聴完了率(以降、VTR と表記)に影響します。したがって、動画広告をコンポーネントというレンズを通して分析することで、企業は広告を構成するどの要素が VTR を向上させるのかを理解できます。こうした分析から得られたインサイトは、新しいクリエイティブを作成する際や、既存のクリエイティブを最適化して VTR を改善することに役立ちます。

提案

企業の動画広告のパフォーマンスを最適化するため、YouTube 広告の分析と、VTR に影響を与えるコンポーネントの評価に機械学習ベースのアプローチを採用することを提案します。以下のことを行う方法をご紹介します。

  • Google Cloud Video Intelligence API で、元の動画ファイルを使用して各動画広告のコンポーネントを抽出する。
  • 抽出したデータを設計済みの特徴量に変換し、ビジネス上の実用的な問いにマッピングする。
  • 機械学習モデルを使用し、設計済みの各特徴量が VTR に及ぼす影響を特定する。
  • 得られたインサイトを解釈し、動画広告のパフォーマンスを改善するためのアクションを実行する(既存のクリエイティブを変更する、A/B テストで使用する新しいクリエイティブを作成するなど)。

アプローチ

プロセス

提案した分析方法は次の 5 つのステップに分かれます。

  1. ビジネス上の問いを定義する - ビジネス上の実用的な問いのリストを作成します(例: 「オープニング ショットにロゴを入れると VTR に影響するか」)。作成にあたっては、反映が可能かどうかを考慮に含めるようにします。たとえば、法的な理由で製品の免責事項を入れる必要がある場合、免責事項が VTR に与える影響を評価する必要はありません。
  2. 未加工のコンポーネントを抽出する - Google Cloud Video Intelligence API などの Google Cloud のテクノロジーと、元の動画ファイルを使用して、各動画広告から未加工のコンポーネントを抽出します。たとえば、特定のタイムスタンプで動画に表示されるオブジェクト、テキストの有無とその画面上の位置、特定の音声の有無などです。
  3. 特徴量エンジニアリング - ステップ 2 で抽出した未加工のコンポーネントを使用し、ステップ 1 で定義したビジネス上の問いに対応するよう特徴量を設計します。たとえば、ビジネス上の問いが「オープニング ショットにロゴを入れると VTR に影響するか」である場合、1: オープニング ショットにロゴがある、0: オープニング ショットにロゴがないのどちらかに各動画をラベル付けする特徴量を作成します。これを特徴量ごとに繰り返します。
  4. モデリング - ステップ 3 で設計した特徴量を使用し、VTR をターゲットとした ML モデルを作成します。
  5. 解析 - ML モデルから統計的に有意な特徴量を抽出し、VTR への影響を読み取ります(例: 「オープニング ショットにロゴがある場合、VTR が xx% 上昇する」)。

特徴量エンジニアリング

データ抽出

ウェブブラウザ用の 2 つの YouTube 動画広告があるとします。動画はそれぞれ、ある製品の異なる機能を強調しています。広告 A には「ウイルス対策を搭載」というテキストがあり、広告 B には「パスワードを自動で保存」というテキストがあります。

各動画広告から未加工のテキストを抽出し、以下のような表形式のデータセットを作成できます。簡潔にするため、この例ではテキストの特徴量のみを扱うこととし、タイムスタンプの要素は考慮しません。

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前処理

各広告の未加工のコンポーネントを抽出した後、大文字と小文字の区別をなくしたり、句読点を除去したりする前処理が必要となる場合があります。

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手動の特徴量エンジニアリング

「製品の機能に言及したテキストを入れると VTR に影響するか」というビジネス上の問いに答えることが目標である場合を考えてみましょう。

サンプル内のすべての動画に出てくるテキストを調べ、製品の機能に言及したテキストのトークンまたはフレーズのリストを作成することで、この特徴量を手動で設計できます。しかし、このアプローチでは時間がかかり、スケーリングにも限界があります。

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AI ベースの特徴量エンジニアリング

上述のような手動による特徴量エンジニアリングの代わりに、各動画広告のクリエイティブで検出されたテキストを、特徴量エンジニアリングを自動で実行するプロンプトとともに、LLM に渡すことができます。

たとえば、動画広告で製品の機能を強調する価値を探ることが目標であれば、LLM に「『ウイルス対策を搭載』というテキストは機能のコールアウトであるか」と尋ね、次に「『パスワードを自動で保存』というテキストは機能のコールアウトであるか」と尋ねます。

答えが抽出され、0 か 1 に変換されて、後に機械学習モデルに渡されます。

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モデリング

トレーニング データ

特徴量エンジニアリングの結果は、最初に設定したビジネス上の問いに対する情報を含んだデータフレームとなります。これは、サンプル内の各動画広告の VTR の情報を含んだデータフレームに統合できます。

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*値はランダムであり、なんらかの解釈が成り立つものではありません。

モデリングは、固定効果、ブートストラップ、ElasticNet により行われます。詳細については、Manisha Arora と Nithya Mahadevan による投稿、ディスカバリー広告のパフォーマンス分析の紹介をご覧ください。

解釈

モデルの出力結果は、重要な特徴量、係数値、標準偏差を抽出するために使用できます。

係数値(+/- X%)VTR の上昇率を表します。正の値は VTR への正の影響を表し、負の値は VTR への負の影響を表します。
有意値(True / False)その特徴量が VTR に統計的に有意な影響を与えるかどうかを表します。

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*値はランダムであり、なんらかの解釈が成り立つものではありません。

この端的な例では、「機能に関するコールアウトがある」という特徴量は統計的に有意で、プラスの影響を VTR に与えています。これは、「製品の機能に言及したテキストを広告に入れると、VTR が 2.22% 上昇する」と解釈できます。

課題

上述のアプローチには次のような課題があります。

  • モデルに入力された個々の特徴量間の相互関係は考慮されません。たとえば、「ロゴがある」と「左下にロゴがある」がモデル内に別々の特徴量としてある場合、それらの相互関係は評価されません。しかし、「大きなロゴがある + 左下にロゴがある」のように、2 つを組み合わせた第 3 の特徴量を設計することは可能です。
  • 推論は過去のデータに基づくものであり、必ずしも将来の広告クリエイティブのパフォーマンスを表すものではありません。また、インサイトが VTR を改善するという保証はありません。
  • 動画広告に含まれるコンポーネントが多いことから、項目の分割が問題となる場合があります。

アクティベーション戦略

Ads Creative Studio

Ads Creative Studio は、テキスト、画像、動画クリップ、音声をすばやく組み合わせて複数のバージョンの動画を作成できる優れた企業向けツールです。モデルの出力に合わせて、特徴量を追加 / 削除することで、新しい動画を迅速に作成できます。

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動画テスト

分析から得られたインサイトに基づいて、コンポーネントを変えながら新しいクリエイティブを作成し、A/B テストを実行します。たとえば、ロゴのサイズを変更して動画テストでテストを作成します。

まとめ

YouTube 広告のどのコンポーネントが VTR に影響を与えるかを特定することは、広告に含まれるコンポーネントが多いため簡単ではありませんが、広告主にはクリエイティブを最適化して VTR を改善できるというメリットがあります。Google Cloud のテクノロジー、生成 AI モデル、ML を活用することで、スケーラブルで実用的な方法で、クリエイティブに関連するビジネス上の重要な問いに答えを出すことができます。得られたインサイトは、YouTube 広告を最適化し、ビジネスの成果を達成するために利用できます。

謝辞

この投稿にご協力いただいた Google 社員、Luyang Yu、Vijai Kasthuri Rangan、Ahmad Emad、Chuyi Wang、Kun Chang、Mike Anderson、Yan Sun、Nithya Mahadevan、Tommy Mulc、David Letts、Tony Coconate、Akash Roy Choudhury、Alex Pronin、Toby Yang、Felix Abreu、Anthony Lui に感謝します。