Google I/O 2024が開催され、今年も新しいプロダクトや新機能がたくさん紹介されています。まずは過去の出来事を振り返ってみましょう。数年にわたり、アプリの開発速度を上げるため、また、自信を持ってアプリを運用するために、Firebaseは何百万ものデベロッパーの方々に活用されてきました。Realtime DatabaseからRemote Configといったツールで、作業を効率化させ、よりシンプルにすることで魅力的なアプリを構築できるように力の限りを尽くしてきました。今日までのジャーニーをもとに、Firebaseは進化を遂げ、速やかな構築と、アプリ内でプラットフォームを越えて最新のAIを活用するエクスペリエンスを実現できるようになりました。
そうした数々の新しいプロダクトや機能のアップデートにより、アプリ開発の一連のジャーニーを通してAIにアクセスできるようになったことをご案内するとともに、進化したFirebaseを表すためにロゴを刷新したことをご報告します。
Firebaseは2012年に、ウェブやモバイルアプリから直接アクセスできるNoSQLデータベースの単独プロダクトとして開始されました。スケーラビリティを叶えるFirestoreやRealtime DatabaseなどのNoSQLデータベースは今でも愛用されていますが、フィードバックの中にはリレーショナル データモデルを求める事例もありました。ここ数年で、健全なデータ エコシステムがSQLベースのバックエンド サービスに登場しました。皆様からのご要望を受け、Firebase Data Connectという新しいプロダクトを用いて、PostgreSQLを限定公開プレビューでFirebaseに導入できるようになりました。
これにより、Firebaseを使用してCloud SQLでホストされているPostgresデータベースにアプリを直接、接続できるようになりました。Data Connectでは、データモデル、そのモデルで許可するクエリ、および許可するミューテーションをすべてGraphQLに基づいた簡潔な言語で定義できます。
type User @table {
firstName: String!
lastName: String!
email: String!
country: String!
}
query GetUsers @auth(level: USER) {
users {
id
firstName
lastName
}
}
こうした情報に基づいて、Data Connectは次のものを生成します。
これをQuery Defined Infrastructure(クエリ定義インフラストラクチャ)と呼びます。データベース、APIサーバー、SDKがすべて、データモデル、クエリ、およびミューテーションから生成されるためです。それぞれが常に同期しているため、スキーマを変更すると、Data Connectはデータベースの移行、APIサーバーのアップグレード、新しいSDKの生成をすべて自動で行います。
さらに、Data Connectは、データベースの値と構成したモデルに基づいてベクトル埋め込みを自動的に生成し、そのうえでKNNクエリを実行することもできます。これにより、別のベクトルデータベースを必要とせずに、生成AI機能をアプリに簡単に構築できます。
Data Connectは今後数か月にわたってロールアウトされます。プレビューのwaitlistに参加のうえ、アクセスし、ぜひフィードバックをお送りください。
Data Connectの詳細は以下からご確認ください。
今回ご紹介したData Connectに加えて、新しいタイプのクエリを多数許可するなど、過去1年間でFirestoreに多くのアップデートを行いました。Firestoreのドキュメントにベクトル値を格納し、クエリすることで指定されたベクトル値のK近傍(KNN)の取得もできるようになりました。
Firebase Genkitは、洗練されたAI機能を簡単で使いやすくするためのAI統合フレームワークです。現在ベータ版のGenkitでは、強力なAIモデル、ベクトルストア、エバリュエータ、ツールなどにアクセスして、RAGのようなパターンのフローを作成できるため、AIライブラリとプラグインを利用した、より高速な構築が可能です。Genkitには、AI機能をローカル環境で実行、評価、デバッグできるデベロッパー ツールも含まれています。
また、Cloud Functions for FirebaseまたはCloud Runをデプロイして拡張できます。Cloud Monitoring とCloud Loggingにデータをエクスポートし、Firebase Authenticationや、App Check、Firestoreと統合するのに便利なプラグインがあります。
現在、TypeScriptでのサーバーサイド開発がサポートされており、Goのサポートもまもなく開始されます。Genkitのドキュメントで、詳細をご確認ください。
GenkitはサーバーサイドでのAI統合の構築に活用できますが、アプリクライアントから直接AIモデルを呼び出したい場合には、新しく登場したFirebase SDK用のVertex AIが活躍します。SDKは、Kotlin、Swift、Dart、JavaScriptのうちお好きな言語で利用でき、モバイルアプリやウェブアプリからVertex AIのGemini API機能を直接呼び出せます。
SDKはApp Checkと統合されており、不正請求詐欺、フィッシング、アプリのなりすましなどの深刻な脅威から保護します。App Checkは、受信しているトラフィックが正規のデバイスで実行しているアプリからのものであることを証明します。有効な証明書情報のないトラフィックはブロックされ、モバイルまたはウェブアプリからVertex AIのGemini APIを自信を持って安全に呼び出すことができます。
Firebase SDKのVertex AIは、現在公開プレビュー版をご利用いただけます。ドキュメントで詳細を確認し、ご活用ください。
最新のAIを利用したウェブアプリの構築とデプロイを支援するために、ゼロから設計された次世代のFirebaseアプリ ホスティングサービスはFirebaseを進化させる大きな一歩となっています。
現在プレビュー版のFirebaseアプリ ホスティングは、CDNからサーバーサイドレンダリングまでのすべてを管理する、フレームワーク対応のサーバーレス ウェブ ホスティング ソリューションです。AngularやNextJSなどの最新のフレームワークをサポートしています。また、Cloud Runなど、エンタープライズ グレードのGoogle Cloudサービスに基づいて構築されているため、スケーラブルで柔軟性があり、安全です。アプリ ホスティングは、ソースコードから検出された内容に基づいて、フルスタックのウェブアプリの構築と運用に必要なインフラストラクチャを自動的に設定します。そうした設定はすべてFirebaseコンソールから指定できます。
ドキュメントで詳細を確認し、Firebaseアプリ ホスティングを開始してください。
Firebaseでは、AIを活用した最新のエクスペリエンスの構築がより迅速にできるようになったほか、アプリの運用方法と操作性も向上しています。
AI機能を開発する際に特有の課題は、現場でのパフォーマンスを実際のユーザーによって評価する必要があることです。しかし、立証されていない機能にユーザーベース全体をさらすリスクを取らずに、新しい機能、特にAIによってビルドされた新機能が顧客に利用される準備ができたという確証を得ることは難しいと思います。
Firebase Remote Configの新機能がロールアウトするワークフローによって、統合されたモニタリングを使用でき、ターゲットを絞ったロールアウトまたは段階的なロールアウトを簡単に実行できるようになりました。これにより、ロールアウトするかロールバックするかの判断を情報に基づいて下すことができます。統合されたモニタリング ダッシュボードは、ユーザー エンゲージメントやアプリエラーなどの主要な指標をリアルタイムで表示し、ホールドアウト グループとの分析情報の比較を行います。
たとえば、下の画像で、ダッシュボードで追跡されている指標の一部を確認できます。このケースでは、エンゲージメント時間がコントロールより増加していることがわかります。こうした変化が何百人ものユーザーに安定して起きていることを確認できれば、ロールアウトを広げる自信を得られます。また、ロールアウトを増やせば、完全リリースの前に、より多くのデータを収集することもできます。すべての機能は同じ場所でモニタリング可能です。
Remote Config機能のロールアウトでアプリのアップデートをリリースできるうえ、ダッシュボードが改良され、新しいアプリのバージョンリリースのモニタ機能を利用できます。新しいリリース モニタリング ダッシュボードでは、Crashlyticsを搭載し、最新のアプリ リリースに関する最重要データをすべて1か所でリアルタイムで確認できます。
データがリアルタイムでローリングされることで、アプリ内の問題がすぐに特定され、ユーザー エクスペリエンスに与える影響を把握することができます。
次の画像で、どのような情報が新しいダッシュボードで確認できるのかご覧ください。バージョンの採用とアクティブユーザーやクラッシュフリーのユーザーとセッションなどを確認できます。新しいダッシュボードでは、最新リリースの指標をライブで、以前にリリースされたビルド(最大2つまで)と比較することもできます。これにより、アプリの歴代の安定性を把握するのに必要な情報が得られます。
数週間前、FirebaseでのGeminiを公開プレビュー版としてリリースしました。FirebaseのGeminiは、Firebaseのデベロッパー向けにかなり専門化され、ターゲットが絞られた支援を提供し、Firebaseのプロダクトと機能に関する質問へ迅速に回答します。現在、FirebaseのGeminiが一般公開され、CrashlyticsでAIアシスタント機能が展開されています。
Crashlyticsで特定の問題をクリックすると、[ Generate AI insights ](AIインサイトの生成)という新しいボタンが表示されます。
この機能はGeminiでクラッシュやエラーを分析し、バグを可能な限り早く修正できるように情報を提供します。インサイトをリクエストしている問題に応じて、何が起こっているかの説明、問題のデバッグ方法のヒント、実行可能な次のステップ、同様の問題を回避するためのベストプラクティスや、ドキュメントへのリンクを取得できます。詳しくはこちらのブログ投稿をご覧ください。
また、Android デベロッパーの方は、App Quality Insightsウィンドウから、Android Studioの最新のCanary Buildで直接、同様のサマリーや推奨事項を生成することもできます。これにより、サーフェスへ移る必要がなくなり、時間を節約して生産性を高められます。
FirebaseのGeminiは2024年7月30日まで無料でご利用可能です。詳細については、「Firebaseの料金プラン」をご参照ください。
Firebaseを信頼し、数年にわたりお客様のアプリ開発にご利用いただき、ありがとうございます。さまざまなアップデートを皆様と共有できること、そして、FirebaseがAIを活用した最新のエクスペリエンスの構築と運用の支援のために進化した点をご紹介できることを嬉しく思っています。今後も皆様のフィードバックをお待ちしております。アプリを魅力的にする手助けとなるという使命を果たすため、引き続き懸命に励みます。
新機能を利用するには、それぞれのドキュメントを確認し、最新のSDKにアップデートして構築を開始してください。
また、チュートリアルも新しく公開しました。新しいFirebase CodelabとYouTube ショート シリーズをご確認ください。この記事でお読みいただいたすべてのリリースのハイライトなどが案内されています。なお、それぞれのリリースについて詳しく説明したブログ投稿も公開していきますので、このブログにも定期的にアクセスしていただければと思います。
5月16日にGoogle I/Oウェブサイトで公開された講演内容もぜひご確認ください。